すげー付箋だらけ。

読むのに時間がかかりましたが面白かったです。
書籍名に「ゲームデザイン」と書いてありますが「ゲームバランスはこうしろあーしろ」という内容ではなく「面白さ」について詳しく解りやすく言語化して解説した本です。
白井博士の未来のゲームデザイン -エンターテインメントシステムの科学-

これからゲーム業界を目指す人(高校生以下)にはちょっとむずかしい本かも知れません。
ただ「ゲームが好き」だけだとこの本を読むのは面白く無いと思います。
ゲーム業界に就職を考えてる方でプランナー希望の方(大学生以上)は読んでおいたほうがいいです。
良い企画に面白さを感じるのには必ず理由があるもの、そのヒントをくれる本だと思いました。

自分の文章力だとちょっと本の紹介がよくわからないことになりそうなので前書きより抜粋

「おもしろい!」の仕掛けをつくる

「人がおもしろいと思う理由」に目を向けて、科学的に理解し、そこにアイデアを落としこむ、アイデアをプロダクトに作り込むエンジニアリングと、それを持続可能な未来につなげていく方法論が必要なのです。
(中略)
本書の著者、「白井博士」はゲーム業界で長年大活躍した人物ではありません。
しかし、エンターテイメントシステムに関わる、多様な職業を経験した工業博士です。

ニコニコメガネ(本人写真あり)
(↑大学の研究だったようで学生さんも関わってるそうです)
「面白さ」についての研究してる方なので「業界人は白井博士を知ってるけど一般人の消費者は知らない」とぶっちゃけそんな感じだと思います(悪気は無いです)
現在は神奈川工科大学の教授をやっているそうでこの書籍は実際に授業で使われてるんかな?

以下ちょこっと気になったところを抜粋
内容の詳細が気になった方は書籍をどうぞ

役に立たないメディアアート=「すごい!」で終わってしまう
役に立つメディアアート=普通の人が使える道具になっている


ソーシャルゲームについて
自分の生活の中にリワード(報酬)がある、さらに実生活に何かフィードバックさせる目的があるのであれば、それは「遊び」ではなく、ライブであり、ライフです。
「ひまな時間をつぶす」という無目的な状態なら、まだ遊びの要素はあると思いますがこの遊びの理論については以下書籍に続く。

パズドラについて
「多くの人にはその遊び方すらわかってない、しかしなんとなく遊べてしまう」という設計になっている。
=対象ユーザーを広くしている
チュートリアルがあったり、「ここ押して」とかナビゲートしてくれれば、なるほどなるほどとなる。
(略)
簡単にいうと「ゲームシステムが自分を見ていてくれる」という感覚がないと、ゲームプレイを続けること自体が難しい。


ゲーム(ジャンル)によって終了条件は異なる

・RPGの「終了条件」=「ストーリーの最後までたどり着くこと」
※「ボスを倒すこと」ではない
※プレイヤーキャラクターが途中で全滅してしまったとしても「ゲームオーバーではない」
この件についてはDQ1の「おお ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない」があります。
岩崎啓眞氏の同人誌に詳細が書いてあった記憶があります(違ってたらごめんなさい)
・「コンティニュー」の登場
・スポーツゲームに見る終了条件
そもそもアゴンは勝利を求めているわけではありません。
闘争するのが楽しいのであって、その終了のシンボルとして「勝利」があるのです。
負けるよりは勝つほうがいいので(と誰かが決めたので)そこに向かって釣られる人だけが楽しいのです。

自分が格闘ゲームが好きではない理由の一つがコレなんですが、ランキングやら数値しか見てない人のゲームに対する遊び方は見ててつまらないです(完全に個人的意見です)
負けてもあまり悔しいとは思わず、勝っても面白いor楽しい、と感じないのでゲームが続かないんですよ。
(ガチャプレイでコンボ出せなくてどうやって負けたかがわからないからつまらないんじゃないの?とよく言われますが違います。そもそもコンボは練習すれば誰でも技は出せますし自分は練習することに抵抗はありません(のでアクションゲームはよく練習してるし練習中も「楽しい」です)
この辺は桜井雅博氏の「みんなよくがんばった」「スマブラで負けたキャラは勝利者を拍手する理由」のコラムを読んでみることをオススメします。
自分のような人もいるので人にオススメゲームを薦める時は相手の好みを知ってよく分析してからにしましょうw

・ソーシャルゲームは「終了条件」が不明瞭
・一方で明確なエンディングもない。
「時間とお金の無駄遣い」をいかにプレイヤーに気が付かせないようにするか、有料アイテムなどを交えて効率と非効率の間を複雑にすることで、プレイヤーが単純に計算できないように設計されている


ゲーム制作における「おもてなし精神」
これはどの本でも必ず見かけますね。ガッツリかいてあります。
デジタルゲームは娯楽媒体なので生活に無くても困らないけど心が豊かになるもの。
心を豊かにさせるためにはゲームをおもてなし精神で作ってあげると良いですよ(意訳)というやつです。
(ゲームを全部親切にしろ、難易度さげろ、という意味ではないことに注意)

遊びとは

実世界に利益を生むような遊びは遊びではありません。
本来は、買った時点で「それはもう捨てたお金」と思わなければ遊びではありません。
法律上もそういう解釈です。
(中略)
遊ぶ側のリテラシーとして「デジタルコンテンツにお金を払って、そこから利益を得る」というような感覚を育てることが、そもそもおかしいわけです。
遊び・ゲームは時間をつぶすためにするのであって、その中で「何かを購入する」ということに対して、プレイヤーに「価値」を感じさせつつも、心理的にも期待としても「捨て金」を諦めさせる必要があります。
(後略)


「諦めさせる!」…すごい表現ですね。

ちょっと話はズレますが積みゲー自慢してる人は「積みゲーを減らす生活習慣を作ること」からした方がいいと思いますね。
自分の稼いだ金くらい好きに使わせろというのはもっともですが「積み」をつくってしまう人はお金たまらず、時間使い方がよくない、部屋汚い、と悪循環にはまりがちな生活習慣の人のをよくみかけます(自戒も込めて)
ただでさえ、娯楽媒体にお金を払うということは「余計なお金を使っている」(無駄金とは言わない)わけでもう少しよく考えたほうがいいんじゃないかなと「積み」自慢をしてる人をみて思います(自戒も込めて←二度目)

なお、積みゲーを減らすために同時並行で2・3種類のゲームを「同時に」プレイしてるフレンドがいますがそれだと全く意味が無いです。
(そもそも、それはゲームを「遊んで」ないですね)


「このシリーズの最新作を買うと、きっと新しい体験があるだろう」という原理的新要素に、感覚のいい人たちは食いつくわけです。
感覚の悪い人たちばかり相手にし知恵るとFarmingとHervestingだけで食べていけそうなものですが、それは「とても野蛮なユーザー」を相手にしているということで、やがて「安かろう、よかろう」になり、その産業はダメになってしまいます。

トロ厨の脳内は「安かろう、よかろう、そこにトロフィーがあるから、作業だいすき」

ゲームは第10芸術?

ヨーロッパの現代哲学に「ゲームは第10芸術」という考え方がある
第1芸術:建築
第2芸術:彫刻
第3芸術:絵画
第4芸術:音楽
第5芸術:詩
第6芸術:パフォーミングアート(舞台、ダンス、パントマイム、サーカス)
第7芸術:映画
第8芸術:ラジオ、テレビジョン、写真
第9芸術:マンガ
第10芸術:確定的な説は無いが「ビデオゲーム」になりそう
第11芸術:メディアアート(デジタルクリエイション)一方では美食なども有力であると言われている

こんな定義が検討されているのかーと驚きびっくり。

笑い検出「L-Pod」

笑いを分析する研究なんだそうです。
ニコニコ動画生放送の「wwww」を測定してグラフに出してくれる加速度センサーとか何かすげー研究やってるみたいですよ。
・人によって笑いのしきい値はことなる
・人によって笑うシーンは異なるが、笑わないシーンは一致する


質問ロジックを使ったおもしろさの評価方法、アンケート調査による「コンピューターゲームジャンルの変容」は面白かったです。
RPGがオワコン化してきた理由もちょっと見えてきた感じがしますね。
人は必ず「飽きる」のでその飽きとの戦い、という内容はノウハウ系の本には必ず書いてありますね。

ソーシャルゲームの「歩きゲー」

これ拡散性MAwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

APが1回復するのに実時間3分かかる。
現在最大APが60、180分間も待てば、また思う存分歩けます。
寝る前にしっかりとAPを消費し、夜中に目覚めたらまたAPを消費できます。
3時間に1度おきればいいことです(中略)
オンライン上のステータスが維持できるよう、がんばってゲームに張り付きましょう…
いやいや、何かオカシイですね。まぁこういうゲームに一生懸命になる人もいると思いますが
(そんなにそのゲームが好きなら、自分で作ったらいいと思います。)

究極の結論をいっちゃったああああああwww
この抜粋文章だけだとソーシャルゲームを叩いてるように見えますが、そんな本ではないです。
ちゃんと続きに「何故そうなっているのか?」という話がしっかり書いてありますので興味がある人は読んでみると面白いと思います。


人が「遊んで面白いと思ってくれるにはどうすればいいか?」が書いてある本でした。


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