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岩田「僕らは既に、ゲームというものが何なんだということに関して、あまり狭く考える必要はないんじゃないかというところに話がきている。
何か人間が入力して、何かが返ってきて面白かったら、それは僕らの仕事としていいじゃないですかと」(P289)

この本について

任天堂総集編+イワッチ&山内本です。
前半はwiiと3DSの開発秘話。
中盤は横井軍平、宮本茂、イワッチの話。
終盤は任天堂の歴史を語りつつ前社長、山内溥の事がメインです。
(敬称略)

あの任天堂がこういう本を出すのに許可を出すのはすごいなぁというわけで読み始めたけど面白かったです。
任天堂をこれから受験する方は必ず読んでおいたほうがいいです。

※任天堂の関連書籍リンクは一番下に書いておきました(他にもあると思います)のでこの本と一緒に読むことをオススメします。

wiiのお母さん「至上主義」

wiiはお母さんのことを考えて作られたという話。

岩田「子供がテレビゲームで遊んだ後、コントローラーが片付けられていないのを見て、お母さんがきーっとなっているとか、家には既に複数のゲーム機があって、お母さんはもう1台もいらないと思っているとか、とにかくゲーム機が邪魔に思われていたんです。だから、家族の誰からも嫌われないようにしないと、ゲーム人口の拡大なんてできっこないというのが、まずありました」(P55)

wiiを開発するにあたって

・(機械の)性能を追わない(→技術のロードマップを外れる)
・お母さんに嫌われない

というところまで議論が辿り着いた

岩田「次世代機は、DVDケースが2,3枚くらいの容積にしましょうよ」(P56)
→ファミコンより小さくしようと考えた
→本体が小さい方が邪魔だと思われない。
→小さいと発熱を抑える消費電力設計を心がける必要があり、電気代の節約にもなる
→発熱が抑えられれば、部品を冷やす大きなファンを必要とせず「ブーン」という耳障りな音を出さなくて済む。

岩田「寝ている間は、絶対にファンを止めなきゃダメですよ。ファンの音がしたらお母さんが電源を抜いちゃうから」(P72)


wiiは「高性能を追わない」(技術のロードマップを外れる)ですが、実は内部はかなりの高性能技術が詰まっているという話が書いてあります。
とにかく本文中に「お母さんが」「お母さんが」と出てくるのが面白いw

バーチャルコンソールの発端

「なぜゲーム機は邪魔者扱いされるのか」という論議であり「儲け」ではない。
→任天堂の据え置き型ゲーム機はwiiまで1度も前世代のゲーム機と互換がなく、古いゲーム機のソフトは古いゲーム機でしか遊べない。
→テレビの前にいろんなゲーム機が並ぶと、お母さんは怒る。
→だけどそこへ「昔のゲーム機は全部片付けていいよ」と言えたら家庭に入りやすくなると考えたのが、きっかけ(P81)


似て非なるアップルと任天堂

どっちも似てるとは確かによく言われてますね。
詳細が書いてあります。
アップルと任天堂の業績比較グラフが掲載されてますが、グラフの動きがほぼ全く同じなのに驚きました。
(このデータほんとなんですかね…と疑うくらい似てるw)

たぶんうちの品質基準というのは、家電よりもだいぶ高いと思います(宮本)

任天堂のゲーム機の耐久基準は、かなり厳しい。
(略)
携帯ゲーム機の場合、「大人の胸ポケットの位置よりも高い1.5mから10回落下させても、正常に動作する」という厳しい落下試験をクリアしなければ、増産のゴーサインは出ない。

岩田「ゲーム機を自転車のカゴに入れた子供さんが急ブレーキを踏めば、カゴから落ちる。落ちる先は絨毯でも畳でもなくて、コンクリート。だからコンクリートに1.5mの高さから落としても壊れないようにしろと言って、ハードの開発部門は悲鳴をあげながらも、いかにクリアするかを考えるわけです」(P176)


この話も有名ですね。ちょろっと詳細が書いてあります。
任天堂ハードは物理的にも内部的にも壊れることが少ないので本当にすごいですね。
その上でサポートもすごいですし。

イワッチ語録


「僕らは基本的にずっと役に立たないモノを作ってきました。役に立たないモノに人は我慢しない。説明書は読まない。わからなければ全部作り手のせい。ゲームソフトも、5分触ってわからなければ、これは『クソゲー』だと言われて終わりですから」(P172)

だからこそ色々考えてつくらなあかん、というお話。

イワッチが一番最初に作ったバルーンファイトの話とかゲームソフトの話題はほとんど載ってなかったのがちょっと残念でしたw
とはいえ任天堂についてはガッツリ書いてあるので書籍タイトル名に偽り無しです。
丁寧に書いてある本なので興味がある方は是非。


「家電屋さんはインターフェースという部分で何かサボっている。でも僕らは、一番そこを真摯に考え、一番厳しい環境で戦ってきましたから」(P173)

→テレビのインターフェース等についての話題。
これに関しては「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち(感想は過去ログ参照)で久夛良木氏も同じことを考えていて現トルネ/ナスネが出来た過程が読めます。
完成品の形は違えど、双方のメーカーの考え方の一致する部分があるのは面白いと思いました(流石だなぁ)


この本を読んだ後、もしくは読む前に読んでおいた方がよい任天堂関連書籍

※敬称略

■横井軍平
横井軍平ゲーム館(感想リンクは過去ログ参照)
ゲーム&ウォッチ、ゲームボーイ、十字キーの開発秘話などは「横井軍平ゲーム館」もあわせて読むと良いです。

■宮本茂
関現時点で単独の書籍が無い(ハズ)で、(任天堂以外も取り扱っている)本、雑誌、webインタビュー記事をあさるしかないというのが現状だと思います(wikip宮本茂
「任天堂 “驚き”を生む方程式」は宮本茂氏がメインの本ではないので(有名な「ちゃぶ台がえし」の話などは掲載されつつも)細かい詳細までは語られてません。
イワッチとのやりとりのエピソードなどが載ってるのでファンの方は読んでみるといいかもしれません。

■ポケモン関連
発売は任天堂ですが開発がゲームフリークなので任天堂本ではほとんど話題になってません。
(ポケモンの話は多少書いてある)
「ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団」(感想は過去ログ参照)を読むことをオススメします。

■カービィ、スマブラ
ゲーム企画した桜井雅博氏に関しては「桜井政博のゲームを作って思うこと」シリーズ(感想は過去ログ参照)が正確です。
任天堂本はゲーム内容や裏話的なものは取り扱ってません。
また桜井氏は任天堂社員ではないため氏についての内容も書いてありません。

■ライバルのソニー本もオススメ
任天堂とソニーのゲームに対する考え方の違いを比較するという意味で「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(感想は過去ログ参照)も是非。
こちらも素晴らしく面白い本です。
特にライターさんの読ませる文章力は任天堂本を超えてると思います。
本としての読みやすさなら任天堂方よりもソニー本が面白かったですね。
任天堂本、ソニー本、どちらの本もエピソードは面白いものばかり。
さらに時代背景や他メーカーの話題もきちんと書いてある良書です。


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